顔面神経麻痺と鍼灸に出来ること
- tatsuro mizukami
- 7月9日
- 読了時間: 4分
何らかの原因で顔の神経が障害され表情筋の動きが悪くなる『顔面神経麻痺』。
日本では1年間に10万人当たり約50人が罹患すると言われています。
顔面神経麻痺はWHO(世界保健機構)の鍼灸適応疾患の一つに挙げられており、臨床においては鍼灸が効果がある疾患として施術されています。
今回はそんな『顔面神経麻痺』についてその症状や、原因、鍼灸にできることを記します。

顔面神経麻痺とは
中枢から表情筋の経路のどこかがなんらかの要因で傷害されることにより、表情筋が動かなくなる、または動かしづらくなる状態を一般に顔面神経麻痺(Facial paralysis)と言います。
顔面神経麻痺の症状
片側の表情筋の麻痺
ある日急に片側の顔がこわばり、目が閉じづらくなったり、喋りづらくなったり、口から水がこぼれおちたりします。
その他
味覚が変わったりする味覚異常。難聴、耳鳴り、音響過敏などの聴覚症状。ドライマウスやドライアイなどが併発することもあります。
顔面神経麻痺の原因
顔面神経麻痺が起きる疾患は複数あり、それぞれで原因が異なります。
ベル麻痺
顔面神経麻痺の中で最も頻度が高く、全体の約60%を占めるのがベル麻痺です。末梢性顔面神経麻痺の代表格で、原因は体内に存在する単純ヘルペスウイルス1型が顔面神経内で再活性化して顔面神経に炎症を起こすことで起こると考えられています。
ハント症候群
ベル麻痺によく似た病気にラムゼイ・ハント症候群(通称ハント症候群)があります。原因は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化で、ベル麻痺とはウイルスの種類が異なります。耳の痛みや水泡を伴うこともあり、ベル麻痺より重症化しやすい傾向があります。顔面神経麻痺の約20%。末梢性顔面神経麻痺。
中枢性顔面神経麻痺
脳卒中や脳腫瘍などの脳自体の問題が原因で起こる顔面神経麻痺で、言葉が出ない、手足の痺れ、頭痛、意識障害なども併発することがあり、緊急の対応が必要です。
顔面神経麻痺かなと思ったら
顔面神経麻痺はストレスを抱えている人や、免疫力の低下している人がなりやすい傾向がありますが、その発症は徐々に進行するというよりは『ある日突然顔が動かない』となってびっくりしてパニックになる方が多い様です。
まずは必ず自分の状態を把握するために皮膚科などの病院に行きましょう。
その結果抹消性の顔面神経麻痺であれば、抗生物質やステロイドなどの薬物療法で神経の炎症を抑えます。それでもなかなか良くならない方は鍼灸との併用も効果的です。
中枢性の顔面神経麻痺は鍼灸治療の適応を外れます。

自分で出来る対処法
※ここで記す自分で出来る対処法は全ての人が必ず良くなるとは限りません。まずは少しずつ行ってみて、症状が悪化するようならやめましょう。少しでも良くなるという実感が感じられるなら継続して行う事で少しずつ症状が緩和されていきます。
対処法その1 - 温める
日頃から入浴などで体を温めて、血流を促進することで筋肉に酸素や栄養素を送り込み、老廃物を排出する事ができます。
対処法その2 - ストレッチ
麻痺があるところの筋肉や、関連性のある筋肉を気持ちよく伸ばすストレッチも改善には有効な事が多いです。ただ、動かす事で痛みが走るような場合はやらない方が良いので、注意が必要です。
対処法その3 -食事
バランスの良い食事はどんな病気にも有効です。筋肉疲労も原因の一つになりえます。食事を見直すことで筋肉疲労を改善させましょう。特にビタミンB群の摂取が疲労回復には効果的です。またヨーグルトや納豆などの発酵食品は胃腸の機能を改善させます。胃腸の機能を改善する事で自律神経が整い症状の改善が期待できます。
対処法その4 -習慣の改善
朝早く起きて太陽を浴びたり、夜ちゃんと眠れる静かで暗い環境を整えたり、習慣や環境を整えることは自律神経の働きを正常に戻します。
鍼灸に出来る事
病院で薬物療法を行うことで、神経の炎症がおさまったとしても、顔面神経麻痺が残ることがあります。
その原因のひとつは顔面神経の損傷がまだ残っている場合。もうひとつは顔面神経自体かその周りの組織がむくみ、圧力が上がってしまっている場合です。
顔面神経の損傷が残っている場合
病院の薬物療法で炎症がおさまっていても、神経自体の損傷の治癒にはもう少し時間を要します。
そこでは鍼灸治療が効果的です。鍼灸の施術により血流の改善や、自律神経のバランスを整え、自然治癒力の後押しをいたします。その結果早期の治癒が期待できます。
顔面神経自体かその周りが浮腫んでいる場合
顔面神経の通り道には狭い骨の間を抜けていかなくてはならないところがあり、その部分で神経や組織に浮腫があると神経自体を圧迫し、麻痺が起こります。鍼灸には水の流れを取り戻す働きがあり、なかなか治らない顔面神経麻痺はこの様な物理療法が効果的な場合もあります。
私は鍼灸マッサージと病院での薬物療法を組み合わせて対処する事が末梢性の顔面神経麻痺には最も有効な治療法だと思っています。「顔面神経麻痺」でお悩みの方は鍼灸マッサージをご検討ください。
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