なぜ鍼灸は効くのか -軸索反射-
- tatsuro mizukami
- 11月18日
- 読了時間: 4分
更新日:2 日前
なぜ鍼灸は効くのか
鍼灸療法は古代から続く伝統的な治療法であり、多くの人々にとって健康を促進する手段とされています。しかし『なぜ鍼灸は効くのか』そのメカニズムは多くの方にとって不思議なものかもしれません。世界で鍼灸療法の科学的メカニズムを解明しようという動きが活発になったのは20世紀の後半になってからで、未だ解明されていないことも多くあるのが現状ですが、今回は現在に至るまでで解ってきた『なぜ鍼灸は効くのか』そのメカニズムの一つである軸索反射をお伝えします。

軸索反射とは
「軸索反射(じくさくはんしゃ, axon reflex)」とは、「脳」「脊髄」「末梢神経」と繋がる神経のうち、「末梢神経」で起こる代表的な鍼灸の反応で、イギリスの医師で生理学者のトーマス・ルイス(Sir Thomas lewis)によって提唱、確立されました。
端的に説明すると、鍼灸の刺激を受けたツボの周囲の血行が改善し、皮膚がほんのり赤くなる反応のことを言います。
鍼灸の施術を受けたことがある方なら見たことがあるかもしれませんが、この血管拡張の発赤ことをフレア反応と呼んだりもします。血行が改善することで疲労物質や疼痛物質などを流し、痛みの改善につなげています。
その時体の中では次のようなことが起こっています。

軸索反射のメカニズム
🔹 基本の流れ
軸索反射は中枢を通らず、1本の感覚神経の中だけで完結します。
🔹 しくみ
皮膚などの末梢で刺激を受ける。
その刺激が感覚神経(求心性神経)を伝わります。
通常その電気信号は中枢神経に向かいます。ところが、一部の電気信号はその神経の軸索(神経線維)の枝分かれしている部分から逆方向(遠心性)に伝わることがあります。
その結果、枝分かれした枝の末端から神経伝達物質(例:サブスタンスP、CGRP)が放出されます。
それによって血管拡張や発赤(赤み)が起こります。
🔹 よく見られる例:「フレア反応」
皮膚をピンで軽く刺すと、しばらくしてその周りが赤くなりますね。
これが「軸索反射による血管拡張(フレア)」です。
この反射は、脳を経由せずに処理されるため、非常に迅速な反応を可能にします。この特性は、鍼灸療法の理解に不可欠であり、鍼灸による体調の変化を詳しく考えるきっかけにもなります。

軸索反射の効果
ここで重要なのが、血管が拡張した際の全身の反応です。軸索反射には痛みを和らげる効果だけで無く、だるさを軽減し、より代謝を上げ、リラックスを促進したり、体の自然治癒力を促進させる効果もあると考えられています。
軸索反射で効果を期待できるおもな疾患は、肩こり、腰痛、筋肉痛などの筋肉系の疾患ですが、不眠など自律神経症状の改善にも関与しています。
具体的な鍼灸の治療例として、慢性的な腰痛で悩んでいる患者さんには、背中の特定の経穴に対し、鍼灸を用いて施術することが有効とされています。
鍼灸は、皮膚や筋肉に存在する神経を刺激することで、体内に伝わる信号を調整してさまざまな変化を作り出しているのです。
熟練の鍼灸師は患者さんに与えるストレスをより軽減し、より効果的に軸索反射を引き出すことも出来るでしょう。
施術後、患者さんからは「鍼を受けた後、体が軽くなった」との声が寄せられることが多く、これは軸索反射による効果でもあると思います。

最後に
鍼灸のメカニズムについて理解を深めることは、あなたの健康への助けにもなると思います。また、自分の体と心の状態をより良く理解するためのきっかけにもなるでしょう。
鍼灸の施術を受ける際は、ぜひ自分自身の体の反応に注目し、効果を実感してみることをおすすめします。
体の感覚や変化にフォーカスすることで、より充実した健康ライフを送ることができると思います。





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